circumstance evidence

状況証拠 – ヤザキユウイチ

「『新しい郊外』の家」

建築的なものとの個人的な接点 著者の馬場さんといえば東京R不動産のディレクターとして有名ですが、ぼくが初めて知ったのは、それ以前にインディペンデントに出版していた「A」という雑誌でした。 当時、働いていた会社が業務停止に追い込まれ、望まないままフリーランスの状態になった時、お仕事でお世話になっていた建築事務所(インテンショナリーズ)のサイト構築のために建築系の本や雑誌の資料をあさっていて見つけたのが「A」でした。 当時(2000年)はトランス・アーキテクチャという造語を散見することができ、建築と周辺別メディアを複合的に見ることで新しい視点を獲得しよう、というニュアンスの言葉だったような気がしますが、それはそのままこの雑誌の特徴に近かったようにも思います。一番大きいのは周辺メディアの一つとしてインターネットも登場していることで、その言葉をとっかかりにネットや書籍や雑誌で情報を探していました。 結局サイトの方は、ありがちではありますが、建築とウェブの構造的な共通点や差異点を提示した上で、ポートフォリオを中心に構成し、時間/場所/種類といった属性でブラウズできるサイトをFlash4で作りました。 また、前職のbAに入った後に(会社経由で)プレゼンのお手伝いをさせていただいたことがあって、そのことは以前書いた通りです。 その後は建築事務所や建築的なこととは接点はなかったのですが、都市論、家族論など周辺分野も含めて関心のある分野の一つでして、読んでとても面白かった本の一部をあげると、伊東豊雄氏「けんちく世界をめぐる10の冒険」、「プロジェクトブック」(レビュー)、上野千鶴子氏の「家族を容れるハコ 家族を超えるハコ」、平松剛氏の「磯崎新の『都庁』」などなど。 東京R不動産は、引っ越しのあてもない時にもたまに見ていたので、今入居している物件を探す際には東京R不動産を中心に探していて、いい物件を見つけて、場所よりも物件ありきで契約しました。 読んでみた そんなバックグラウンドもあったのですぐに買って読んでみました。都内暮らしを必然とする著者が、突然、千葉の海岸近くへ住むことを決意してしまった経緯と、実際に家を買うまでの方法論的体験談。 率直でテライのない語り口なので、素直に気持ちよくスイスイ読んでいくことができました。書かれてることは大きく分けると3つ。 ・支払いの話 家を立てる時には工務店へ3回(着工時/上棟時/竣工時)支払いのタイミングがあり、それぞれ3分の1づつ払う必要があるが、住宅ローンを利用する場合、建物がたった後でないと担保となる建物自体がないので、建物が立ってから銀行から工務店へ一括で支払われるので、工務店としては資金繰りに困りますね、と。そこで登場するのが住宅メーカーで、工務店と銀行の間に入り、間のやり取りをパッケージ化。途中で必要な運転資金を肩代わりしてくれるので銀行にもメリットがある。これが、銀行が住宅ローンを組む際のメジャーな仕組みなので、住宅ローン組みつつ、住宅メーカーに頼まずに建築家に依頼する場合に立ち行かなくなってしまうので別な方法を考える必要がある、と。 この辺は説明不足かもしれないので、興味がある方は本を手に取ってください。 ・間取りの話 住まいが家族の生活や関係を規定する面もあるのではないかという実体験を元にした話。セキララです。家のある場所や間取りが、一緒に住む人同士の関係を浸食する話。オーダーメイドで家を設計することは、その家族の人間関係の可視化である、と。 ・リノベーションの次の波? 物件+場所の新しい価値観の話 従来「東京R不動産」が提案していた価値観が旧来の不動産屋がもっていなかった住まいに関するセンスや価値観だとしたら、その価値観が広く定着した今、「R不動産」の次なる価値観の提示にように感じました。ベッドタウンとして寝に帰るだけではなくて、仕事とプライベートとで住まいの場所を使い分け、積極的に勝ち取るものとしての首都圏郊外暮らしみたいな感じでしょうか。 まとめ的な何か もっと順風満帆な方だと思っていたので、波乱万丈な(?)エピソードは驚きました。 勝手かつ一方的ながら非常に親近感持てました。過去の一つひとつの動きが必然的につながって一つも無駄になっていない所に心動かされるというか。もしかしたら(スケール感は異なっても)何も特別なことではなくて、誰であってもそうなのかもしれないと思ったり。先週デブサミでの西村佳哲氏の講演と合わせて、ちょっと勇気もらえた感じでした。

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